バリアフリー推進事業

平成20年度ECOMO交通バリアフリー研究助成対象事業 完了報告

研究助成名

視覚障害者の歩行特性分析に基づいたバリアフリー移動支援方法の提案(428-2)

研究者名

上智大学理工学部 矢入 郁子

研究内容

申請時に示したフローチャートから、現状を示す。以下の図1.の太い赤線で囲んだ部分が、平成21年度(2010年3月まで)達成された部分である。

中間報告以降の差分として、12月に上智大学の構内で視覚障害者1人あたり2時間の歩行実験を合計8名分実施した。その結果以下の2つの特筆すべき結果が得られた。

分岐点検知方法が2つ以上、すなわち方法が定まっていない被験者と、分岐点検知方法が一つの被験者との心理的・歩行能力的な差分がみられた。

昨年の実験に参加した2名(ともに重度視覚障害が進行中)の追跡調査により、時間の経過につれて視覚障害者が、より慎重になり、自分流の歩き方を身につける様子が歩行実験と心理テストから裏付けられた。

また、今回は新たにjavaでプログラムが開発可能かつ地磁気センサを内蔵し、基地局補正により高精度で測位可能なデバイスとしてスマートフォンを用いて、分岐点において方角を方位もしくはその方向にあるランドマークで示すだけの、最低限の機能を実現したナビゲーションシステムを開発し、以下の歩行実験を行った。

上記8名の被験者に対し、指示されたルートを自立的に移動する際の補助器具として用いる実験

  1. 上記8名が上智大学構内を歩く際に、周囲のランドマークを提示する実験
  2. 1月に日本点字図書館の協力で行った10名の被験者が点字図書館から高田馬場駅まで移動する際にシステムを利用してもらう実験
この結果、分岐点での方角提示支援は、分岐点検知が確実に行える歩行能力の高い視覚障害者にとってはあれば便利という程度で必要不可欠な支援にはなりえないが、分岐点検知にミスの多い歩行能力が発展途上にある視覚障害者にとっては、すぐにでも欲しい必要不可欠な支援であることがわかった。方向支援は、容易に実現可能な支援ではあるが、歩行能力が発展途上にある視覚障害者がその支援を受けて快適に自立的移動を行うためには、分岐点で確実に曲がれるよう分岐点検知支援が前提として不可欠であることも、これらの実験を通して示すことができた。

研究のフローチャートと現状での達成部分

研究のフローチャートと現状での達成部分

 

バリアフリー設備のご紹介

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