バリアフリー推進勉強会

当財団では、移動円滑化に関する新しいテーマや課題について、関心のある方々と情報共有し改善の方向性を考えることを目的とした交通バリアフリーに関するワークショップを月に1回開催しています。

第8回バリアフリー推進勉強会 in 関西 開催結果概要

誰もが利用しやすい公共空間でのトイレの整備について

開催日
2018年10月12日(金曜日) 15:00〜17:40
開催場所
中央電気倶楽部 5階511号室
参加者数
102名
講師
大阪高速電気軌道株式会社鉄道事業本部 建築部 建築課長 池宮学氏
障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議 鈴木千春氏、石田義典氏、中村香子氏
コメンテーター
エコモ財団 松原淳
コーディネーター
近畿大学 名誉教授、関西福祉科学大学 客員教授 三星昭宏氏

講演概要

池宮 学 氏「Osaka Metroのトイレリニューアル事業について」

(以下、講演概要)

■トイレリニューアルプロジェクト開始の背景

駅トイレは、お客様アンケートで「暗い」「くさい」「汚い」、いわゆる3Kトイレと言われていた。

平成23年のアンケートでは、トイレの清潔性に関しては17%、トイレの安全性に関しては26%の方が「そう思う」という回答だった。駅のトイレは「よっぽどじゃないと使わない」「できる限り避ける」「駅でするなら我慢する」「寒々しい雰囲気がする」「何となく不気味だから入るのをためらう」など、厳しいお声を頂いていた。当時社内的にはそれほどトイレに対して強い思いはなく、年間3駅程度のペースで洋式化、オストメイト対応設備の設置、段差解消などを進めていた。

民間鉄道会社出身の局長が就任した平成24年に転機を迎えた。実感できるサービスアップを早期に実現することが必要だと訴えた。まさにトイレの改修は、お客様の目に見えるサービス向上に繋がるということで、平成24年から27年度までの4ヶ年で、地下鉄112駅の各駅1箇所以上のトイレをきれいにするという計画になった。更に付加価値のあるものを追究しろという号令もかかり、計画自体が変わったことで、24年度当初予算5000万円が、10倍超の5億数千万円となった。今までではないスピード感で整備を行っていくことになった。

■トイレリニューアルプロジェクトの考え方

従来の設計の考え方は、どの駅も仕様は一緒が基本だった。30年程度の耐久性、清掃のしやすさを重視して整備していた。コストは高いが、デザイン性には劣っていた。

今回のトイレリニューアルプロジェクトにおける考え方は、最新のスタイルを取り入れ、劇的な変化を感じてもらおうとした。多様な社会ではニーズの変化も早く、設備も陳腐化するという前提で、耐久性は30年ではなく、改修周期を15年程と設定した。これにより建材等のコスト削減にも繋がった。

改造工事をする場合、従来の役所の考えでは、全駅で同じようなリニューアルをしないと、皆様に平等なサービスを与えられないというものだった。只、スピード感ある改革を実施する上では、その考え方では無理があった。駅を利用されるお客様の多寡で峻別し、スピード感ある整備を行った。

御堂筋線の主要7駅で、弊社のお客様の4割ぐらいを占めている。この7駅ではリノベーションと称して、トイレ自体の大きさもかなり大きくした。内装も各駅によってデザインを変えた。一方その他の駅では、リモデルと称してトイレ自体の大きさは変えず、内装と便器等の設備を刷新した。

最近の商業施設、高速道路のサービスエリアの進化したトイレを既に経験されたお客様の満足を得るためには、更なる付加価値あるサービス、デザイン性を検討する必要があると考えた。そこで、設計側だけの思いではなく、実際使って頂くお客様のことを常に考え、サービスアップを実感頂けることを第一の目標にした。具体的な手法は、リモデルにおいては、各駅共通のデザインとして、木質感のある大きな壁とトイレを示すシンボルグラフィックをしつらえ、おもてなし感を表現した入口とした。

内装設備も刷新した。トイレ空間を拡幅し、レイアウトも一新するリノベーションでは、その駅独自の特徴あるデザインを施すことで、おもてなしの心をトイレから表現することにした。

具体的な整備方針として、14項目を設定した。その内の幾つか紹介する。

@清掃性、デザイン性を考慮して、床、壁、天井の内装仕上げを一新した。A最新の移動等円滑化整備ガイドラインに基づく整備を行った。B全駅の女子トイレの中にパウダーコーナーを設置した。C和式便器を全て洋式化した。D男女1箇所ずつにオストメイト対応便器を設置した。E男女1箇所ずつに、ベビーカーがそのまま入れるような広めのブースを設置した。Fデザインと機能性に優れた小便器を設置した。G蛍光灯等ではなく、温かみのある照明器具を選定した。H通路から見える正面部分に、一目でトイレと分かる大型サインを設置した。Iトイレ入口とブースの袖壁に、どういう機能があるかを示すサインを設置した。

もう少し詳細に整備内容を説明する。平成24年に開始したトイレプロジェクトが則った最新の移動円滑化ガイドラインは平成19年の7月版だった。ガイドラインの整備内容には、3つのランクがあった。まず、事業者が最低限整備しなければならない義務的内容が二重丸。2つ目は標準的な整備として行うことが望ましいモノが一重丸。3つ目は利用者の利便性・快適性に配慮した望ましい整備内容がひし形。今回のトイレリニューアルは、おもてなしの心をトイレから発信することだったので、望ましい整備内容を目指すという方針で設計をした。

例えば小便器。丸の標準項目は、てすりの設置、床置式、低リップ、自動センサーとなっている。ひし形の望ましい項目はフック、手荷物棚の設置。今回のトイレリニューアルで整備した小便器には、丸とひし形の4項目を全て網羅した。

■トイレの改修の具体的な内容について

和式便器の廃止に至る経緯を説明する。男女別の好むタイプの便器の割合を調査したアンケート調査では、男性で7割、女性で6割が洋式派だった。和式派は、男性で14%、女性では22%だった。只、除菌クリーナー付きであれば、洋式も使うという和式派の方が結構いらっしゃる。これを足し合わせると、男性で96%、女性で92%の方が、除菌クリーナーさえあれば洋式を使って頂けるという回答から判断し、全て洋式にした。只改修当初は、「和式をなんでなくすんや」と毎日のように苦情が来たが、さすがに最近はそういうお声はほぼゼロになった。

多機能トイレの機能分散について説明する。多機能トイレが混んでいるというお話があった。オストメイト設備や温水洗浄便座を多機能トイレにしか付けていないことが、混雑原因にもなっている。その利用集中の緩和措置として、一般トイレに子供連れで利用できるブースやオストメイト対応のブース、また、温水洗浄便座を一部で設置することで機能分散を図っている。

トイレットペーパーを入れておく紙巻き器については従来の縦型を横4連型に変えた。変更後は荷物置きや手すり代わりにも使える強度を持たせた。手すりも従来のL字型から縦一本のものに変わり、すっきりさせることができた。昔はステンレス製だったが、内装も温かみのあるものにということで、樹脂製で握りやすく温かみのあるものに変えた。

小便器は、デザインと機能性に優れた、リップ高が35cm以下のものにした。従来は床置き型で、床に直に接しているため、床のつなぎ目に汚れがこびりつきなかなか取れなかった。そこで、床から浮かすタイプを採用することで、きれいに掃除もできるようになった。また、先端が少し細くなっているので、便器にかなり近づいて用を足せ、床への飛び散りも抑える効果がある。下にある汚垂石には、最新の抗菌性に特化したものを使っている。

更に、水を流すためのセンサーを便器の中に付けることで、壁面の台の高さを下げることができ、荷物を置きやすくなった。また上部の棚は縁にあごがついたものを採用した。そうすることで、荷物を置いた際にずり落ちて来ることがなくなった。傘も簡単に引っ掛けることができるというメリットもある。新しい小便器はかなり節水効果が高く、省エネにも貢献している。

正面デザインについて。当社のトイレは奥まった場所に設置されていることが多く、トイレリニューアルの前は、「トイレの場所が分かりにくい」との指摘が多かった。それを解決するため、あまり駅構内では使われていない木目調の仕上げ材を導入した。そして、商業施設ではよく使われている大型サインを置こうと決めた。そのままJISの男女マークを置いても面白くないなということもあり、少し遊び心も入れつつ、おもてなしの心を表現する、頭を下げて招き入れるという意味も込めた男女のシンボルグラフィックを作成した。下には「ようおこし」という文字も入れた。一目でぱっと分かることから、ロービジョンの方からも「分かりやすい」というお声を頂いたとも聞いている。

照明には、温かみのある照明器具を選定した。空間に与えるイメージには、照明器具が凄く重要である。これまでは蛍光灯を使っていた。しかし、落ち着くための照明ではなかった。トイレではゆっくりして頂くスペースにしようと、色温度が3,500ケルビンの温白色にし、温かみのある空間にした。

パウダーコーナーの照明も変えた。演色性の高い照明を使った。演色性が一番高いのは太陽の光。これを100とすると、ショーウィンドウ並みの演色性のある、85という数字を持つ製品を採用した。女性が一番きれいに見えるものを設置した。

■トイレリニューアルプロジェクトの現状と今後について

リニューアル事業は平成29年度末時点で、108箇所で実施済み。毎年大体20箇所前後ずつ実施している。今後平成36年度までに、全トイレ171箇所を整備する計画で進めている。

リノベーショントイレ7駅については、独自のデザインで整備をしている。新大阪駅では、自分のお気に入りの場所に帰ってきたようなくつろぎ感を感じて頂けるトイレを目指した。新大阪駅は地上駅なので、本物の木を使ったタイルを使用し、温かみのある空間を演出した。女子トイレでは、大きなパウダーコーナーを設置した。もともと5、60uだった広さも、倍以上の130uぐらいにドーンと作り変えた。スペースに余裕があったので、おむつ交換台を男女共に付けた。子供連れの方用のブース、オストメイトの方用のブース、そして、多機能トイレも大きめのブースを男女2つずつ整備した。

完成後に行ったアンケート結果からも、やはりトイレの美化が一番に挙がってくる。リニューアル後の満足度についても、90%を超える方から「満足」という回答を頂いている。この新大阪駅の取り組みでは、平成27年9月に国土交通大臣から、女性の暮らしの質向上に資する取り組みということで日本トイレ大賞を頂いた。

これからの課題について。まずはインバウンド対策が挙がる。大きいスーツケースを持たれているので、どうしても入りやすい多機能トイレを使われるケースが多い。また、ウォシュレットがある所を使いたいという方が多く、今年度から一般トイレにも温水洗浄便座を付けていく取り組みを始めた。

リニューアル後のトイレの美観の維持について。特に今インバウンドの方の使い方が、我々が想像したものと違う使い方をされるケースが多い。便座への座り方や紙の流し方を四か国語で示したシールを作って、各ブースに貼る対策を取っている。

以上でOsaka Metroの発表を終わります。ご清聴有難うございます。

鈴木 千春 氏「トイレの「困った」を改善したい-障害者あるある事例を通じて-」

(以下、講演概要)

自己紹介です。私は普段簡易電動車いすを使って生活をしている。障害名は頚髄損傷です。14歳の時に首の骨を折り、身体が動かなくなった。車いすを使っての生活を今26年過ごしている。従って、日々トイレに関しても気にしながら生活をしてきました。

私は普段、障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議の交通部会を担当しながら、都島区にある自立生活センターあるるで、障害者の方の相談を聞く取り組みをしている。

私はかつて一人暮らしで、ワンルームに住んでいた。自分だけが使う形式を考えて、トイレと浴室は全面的に床をかさ上げした。横に移乗をしてトイレまで移動するというスタイルを家ではとっていた。頚髄損傷と言っても、自力で排尿をしている方、腹圧をかける方、タッピングをする方など、色んな排泄の仕方をしている方達がいる。私が14歳の頃は、カテーテルを使って2、3時間毎に排泄していた。今は留置バルーンというものをつけている。入院や手術の際につけられる、おしっこを溜める袋です。溜まったおしっこを捨てる環境が必要です。その他にも人工肛門や人工膀胱がある。ストマとかパウチを利用している同じ障害の人達もいる。そういった意味で、色んな機器が使える状況にあるのかという不安が絶え間なくやってくる。

私の障害に関して言うと、我慢をすることができない。カテーテルを使って排泄している時は、腹圧がかかると失禁してしまう。よって、トイレの場所を常に意識して探していたことを覚えている。

あるある話で幾つか頂いた情報を話します。ナンバのあるトイレです。便器の周りに柵で取り囲まれるように設置されている。トイレをやり終えた後、トイレットペーパーが取れなかった。45度後ろ位にあったようです。また、自分ではドアも閉められず、また、回転することもできないトイレ内ブース環境だったとのことです。そういうようなお声がいろいろある。

手すりについてです。波型手すりとL字型手すりと書きました。脳性麻痺の方などでは、縦型の手すりが重要という話がある。波型手すりが設置されている例が、幾つかの商業施設や大学関係施設で見かけたことがある。こういったものが設置されると、立ち上がれないという声があがっている。

盲ろうの方たちの例では、視覚の部分と聴覚の部分で課題がある。通訳介助の方が異性の場合、多目的トイレを利用することがある。そうすると、広すぎて状況の把握がなかなか難しいというお声がある。実際に突起物になるようなもので頭をぶつけてしまう事がある。

私は視覚障害の方と一緒の時、トイレの中の状況をお伝えして「じゃあ後で」と退出することがある。そういった時に、視覚障害の方に伝える時のポイントです。まずはドアの形状、鍵のかけ方です。健常の方と一緒に行っている時は、手でここが鍵ですというふうに確認している。しかし、私の場合それができない。右に30cmぐらいとか、声でのやり取りを重ねながら確認している。まず鍵を説明し、便座の向き。それから、ペーパーの位置、流すボタンの形状と位置、方向をお伝えして退出する。行く途中に洗面所を通るので、その時に、入って左手に洗面所が4つ並んでいるという状況もお伝えする。

このように必要な情報をお伝えする方法を色んな方が知っていると、安心できる環境が増えるのではないかなと思っている。

石田 義典 氏「なんば 車いすトイレマップ」

(以下、講演概要)

車いすトイレマップを作ったきっかけです。「おにごっこ」という街のど真ん中で、障害者、関係者が300人、400人集まって、丸一日遊ぶ企画を毎年やっています。最初が梅田。阿倍野・天王寺でやった時に、キューズモールだと全部の階に車いすトイレがありますが、近鉄百貨店やフープ等では車いすトイレがどこにあるか探すのがとても大変だったという経験がある。

その前には新世界でも「おにごっこ」を実施しました。新世界で串カツ食べて、ビールを飲んだ後、トイレに行きたくなったら車いすトイレってどこにあるか、皆さんご存知ですか。答えを言うと、ほぼない。動物園の中にはある。動物園の出口にリニューアルされた公衆便所があるが、車いすトイレではない。ある場所は駅、そして、最近できた東横インの中にはある。あとは通天閣を上がった中にある。

では、ビールを飲んだ後にお店で行ける車いすトイレどこにあるかというと、私が知っているのは、ある1軒の串カツ屋さんの中だけにある。あとはない。これが実情で、とても困る。(実は最近もう一軒の串カツ屋で見つけましたが、外からは分かりません)

難波の車いすトイレについてです。マップにあるように、50箇所近くある。マップ作成のきっかけは、偶然に千日前商店街の方からバリアフリーマップを作りたいという希望があった。そして、障大連で行っている「おにごっこ」を、次は難波でやろうと思っていた。たまたまそれが重なった。

最初に車いすトイレのマップを作ろうと思った時に、障害者当事者の方々から、道頓堀は車いすトイレの過疎地だと言われた。しかし、実際に探してみると思っていない店にあった。そこで、難波の段差のないビルを1軒1軒全部回って、「車いすトイレありますか?」と聞いて作った。ホームページで調べても、どこにもない情報ですので、足で稼いで作ったマップです。

例えばどんな所にあるか。難波の戎橋の目の前に、上にTSUTAYAが入っているスターバックスがある。実はここに車いすトイレがある。このビルの何階にあるかを知っている方はほぼいないと思う。答えは6階。6階は従業員フロアに当たる。例えば私が1人でスターバックスに行って「トイレ貸してください」と言ったら、「ありません」と従業員からは言われる。しかし、車いすの人と一緒に行って聞くと、「6階にあるので案内します」と言われる。同じような案内をするビルが幾つかある。

道頓堀を歩くと、ドラッグストア、カラオケ店、回転寿司店など、実は全部に車いすトイレが備わっている。しかし、店の前を歩いても絶対分からない。尚、あるドラッグストアのトイレに行くと中国語で「工作人員以外禁止進入」と書いてあった。これは、店員以外は使用不可という貼り紙だった。

車いすトイレマップ作成時には、ドアの広さ、手すりタイプ等色々調べた。データを載せても分かりにくく、最終的には一目見ても分かるよう写真を載せた。実は車いすトイレはたくさんあるのに表示がなく、あっても位置が分からない。これはバリアフリー法とか大阪府福祉のまちづくり条例で、トイレの設置の義務はあっても、車いすトイレの表示に関しては特に求めてない。

それから、コンビニなどでは「トイレありません」と大きく書いてあるケースがある。店の人によると、外国人のトイレのマナーが悪いという話があった。しかし、よく考えてみるとマナーが悪いのではなく文化が違う。中国、韓国ではトイレットペーパーをトイレに流さず、くずかごに入れるのが正しい。従って、日本で同じことをするとマナーが悪いとなる。一方で、アメリカに行った際に感じたのは、車いすトイレを探す必要がなかった。なぜかというと、1箇所にしかトイレがなくとも、そこのトイレには必ず車いすがあった。日本では車いすトイレを探すという苦労が、まだまだあると感じる。

中村 香子 氏「トイレの「困った」を改善したい-障害者あるある事例を通じて-」

(以下、講演概要)

私達はトイレを外出目的にしているわけではないが、途中で行けるトイレを探さないと、結果的に行きたい所にも行けなくなる。従って、トイレがすごく大事なポイントになっている。しかし、折角探したのに順番待ちの行列があったり、やっと空いたと思い、入ったとたん「何だこの機能は!?」という困った状況もある。本日皆さんがおっしゃったトイレの機能分散にとても期待している。

実例をご紹介します。梅田の地下街、ホワイティうめだです。改修後、ピクトが大きくなり、とても分かり易くなった。只、ちょっと残念なのは、オストメイトの機能分散がここの表示だけでは分からない。実際にトイレの個室の手前まで行くと、扉の所にしっかり分かり易いピクトが表示されているが、車いすの友達に言わせると「中に入って初めて分かるようではダメ」とのことだった。従って、トイレの外部表示箇所に、機能を示して頂くのが大事だと思う。

大阪メトロのピクトにも当事者から意見があった。車いすの方も利用できる多目的トイレ以外にも、小型の車いすが利用できるトイレが、中にあることがある。これも中まで入ったらその旨分かるピクトがあるが、残念なのは機能分散表示のピクトが車いすトイレ出入口から見えないこと。一般トイレ利用者の行列のため、車いす利用者の目線が届かないということもある。

JR茨木駅で、当事者とJR職員一緒に車いす利用を検証した。リニューアルするにあたり、何が良いか意見交換をした。トイレ少し変えましょうとなった時に、トイレへ向かう通路に曲がりにくいカーブがあった。車いすでもスムーズにカーブできるよう角をカットして頂いた事例もある。

車いすトイレの有無や、そこにどんな機能があるのか、事前に情報が公表されていることが大事です。大阪メトロのトイレのように、ホームページで把握できることはとても大事です。同時に、トイレの機能分散についての情報も発信されると非常に有難い。また、現地でも分かるような形で案内サインの充実をして頂けると有難いと思う。


パネルディスカッション

(以下、主な質疑応答)

【聴講者】

盲ろう者には、今のトイレで水を流す方法は、全く分からない。私の場合、足で押すなど、昔のイメージをそのまま持っている。今はボタンが3種類、4種類と付いている。非常ベルを間違って押してしまうこともある。

【池宮氏】

今回のトイレリニューアルでは、かなりのスピード感で行っている。今後ある程度の統一感はとれていくが、その統一感をマップのようにまだお示しできていない。今後の課題だと感じている。ある程度使い方を統一して、お伝えすることが大事だと感じている。

【石田氏】

個人的な経験で、トイレの水の流し方がどうしても分からなかった記憶が2回ある。1つはトイレの蓋の根元だけに小さいボタンがあったケース。いくら探しも分からなかった。もう二つ目のケースは、どうしても見当たらず、もう仕方ないから出ちゃおうと思ってドアを開けたら流れた。自動センサーだった。これは日本だけの問題のような気がする。他の国に行くと、どんなにいいホテルでもトイレはすごいシンプル。自動センサーがあるのもOKですが、普通に流すボタンも必ず決まったところにあるのが望ましい。健常者でも分からないので、ましてや視覚障害者には分かるわけがないと思う。

【聴講者】

車いすも手動車いすや電動車いすなど、様々な種類や形がある。トイレの改修をされる時に、ユーザーのアイデアや意見を聞く場は、どれぐらいあったか。

【池宮氏】

直接にはそういう場は設けていない。社内にバリアフリー担当が別にあるので、そちらから話を聞いたり、メーカーと色々と話をしながら設計を進めた。

【三星氏】

通路幅については、決めているものはあるか。

【池宮氏】

一般トイレの中については、特に具体的な数字としてはない。ケースバイケースで決めている。

【石田氏】

私は男性の車いすの方のトイレ介護をよくする。特に男性の場合、全員車いすトイレが必要なわけではない。男の場合はしびんで取る人も多い。そうすると、一般のトイレでも全然かまわない。車いすトイレしか入れないではなく、一般のトイレに車いすの人でも入れれば、人数が多くても男性の場合は分かれて行ける。男性に限る話ですが、そういう発想でお願いしたい。

【三星氏】

国の基準でも府の基準でも、トイレの通路幅という細かい所までは書かれてない。それはこれからの課題です。皆さん設計される時にはご注意いただきたいというような話だった。

【聴講者】

一般便房に対しても段差解消しましょうという規定があるのか。これまで段差解消は、一般便房に関しても取り組んだか。

【池宮氏】

平成23年度までは段差解消をメインに計画を立てて行っていた。現在はエレベーター等の大規模なバリアフリー施設を整備する際にトイレが支障となる場合、段差解消などを同時にやるやり方で進めている。そのような整備は最大でも年に2,3駅となり、どうしても時間が掛かる。機能分散の実施を優先しているため、段差解消の進展が遅いのが実態である。只、段差解消を全くしないというわけではない。大きな工事がある際には、第一に考えて実施する。今回のトイレリニューアルでも、御堂筋線の7駅については全て段差解消した。少しメリハリをつけた形になるが、整備を今進めているのでご理解頂きたい。