バリアフリー推進勉強会

当財団では、移動円滑化に関する新しいテーマや課題について、関心のある方々と情報共有し改善の方向性を考えることを目的とした交通バリアフリーに関する勉強会を月に1回開催しています。

第24回バリアフリー推進勉強会開催結果概要

知的障害者の公共交通機関の利用実態と課題 〜地域への架け橋に〜

開催日
2015年7月23日(木曜日) 18:00〜20:00
開催場所
TKP市ヶ谷カンファレンスセンター カンファレンスルーム6B
参加者数
30名
講師
社会福祉法人東京都知的障害者育成会 理事 永田直子氏
コメンテーター
CIL小平 医療・情報チームリーダー 佐藤草作氏

講演概要

平成18年のバリアフリー法では、身体障害者だけでなく、知的障害者、精神障害者、発達障害者を含むすべての障害者が対象となることが明確化した。それから9年が経過し、知的障害者を取り巻く公共交通機関の利用実態や課題について永田氏からお話いただいた。

永田直子氏「知的障害者の公共交通機関の利用実態と課題〜地域への架け橋に〜」

(以下、講演概要)

講師:永田さん

障害者権利条約の批准により障害が「社会モデル」に変わったことで、社会的障壁の解消、地域社会の理解や受け容れの変化、障害者の活動や触れ合いの場の広がりなど、より心のバリアフリー化が求められるようになってきた。さらに、「障害者差別解消法」の制定により、@不当な差別的取扱い、A合理的配慮の不提供といった社会的障壁の除去が進められている。知的障害者への配慮の基本は、「無理解をなくし、偏見を持たずに接するということ」という心の障壁を無くすことにある。 「知的障害(ダウン症や自閉症)」の判断の定義は、@知的能力(IQ)が70未満、A発達期(18歳未満)に発症、B社会生活に適応できる能力が同年齢の人に比べ低いなどが挙げられる。しかし、治療では治らないが環境を整え、経験を重ねることにより社会生活能力は向上する。また、障害の原因としては、出生前の内的要因や外的要因、周産期の出産トラブルや未熟児等があり、知的障害を伴う可能性のある主な脳の障害として「てんかん」「脳性マヒ」などがある。

第24回勉強会の様子

知的障害のある人の特性として、@他の人と少し違うところは、「こだわりがある」、「感覚に対して繊細、鋭敏」、「物の見え方、聞こえ方に偏りがある」、「動きに特徴がある」など。Aあまり得意でないこととして、「抽象的な思考、概念形成が苦手」、「見通しを立てるのが苦手」、「コミュニケーションが苦手」など。B優れている面として、「感受性や感性が豊か」、「優しい」、「まじめ」などがある。乗り物が大好きで詳しい人も多い。ただし、障害により似た傾向はあるが、一人ひとりの特性は様々である。

交通機関での困りごととして、@目について気になること(ちょっと違って、誤解されやすい行動)は、「ひとり言が多い」、「うろうろ動き回る」、「ぴょんぴょん跳ねる」など。A嫌がられる/迷惑な行為(こだわりや他のお客様の存在に意識がいかない行為)として、「列に順番で並んでいられない」、「決まった席に座りたがる」、「特定のものをじっと見たり触ったりする」、「匂いを嗅ぐ」など。B本人が困ること(困っていることが伝わりにくい状況)として、「バスや電車に乗り間違える(戻り方がわからない)」、「困ったときに自分から誰かに聞けない、相談できない」など。そのため、交通機関での知的障害者への対応で、@配慮してほしいこととしては、療育手帳、ヘルプマーク、ヘルプカードなどを付けたり、提示した場合に連絡先、行き先、対応上のヒントがあることを理解する、怒ったり怒鳴ったりせず、優しく穏やかに対応することなどである。また、A話かけるときのポイントとしては、ゆっくり、簡潔に、具体的でわかりやすい言葉を使い、感情的にならず穏やかに、静かに、しかし毅然として、年齢にふさわしい対応をすることである。さらに、B対応するときの基本的な考え方は、同じ一人の人として尊重することである。なお、配慮と黙認は違うことを周囲の人に理解してもらいたい。

意見交換の様子

また、家族や支援者からの交通機関への要望として、異性でも介助できるトイレやホームドアの設置、運賃割引制度の統一などが出ている。職員の研修等で特別支援学校や障害者施設の見学などを取り入れて、本人たちの様子を知ってもらいたい。

最後に、共生社会の実現に向けて、交通は社会を広げるための架け橋となるため、知的障害者がより安心して利用できるようにお願いしたい。

佐藤草作氏「地域での自立生活実現の課題と移動に関する問題点」

(以下、講演概要)

コメンテーター:佐藤さん

自立生活センター(CIL)は、障害者が主体となって運営し、権利擁護を活動の基本に障害者が地域で暮らすためのあらゆるサービスを提供している組織である。現在、CIL小平では3名の知的障害者の自立生活を支援している。支援体制としては、平日日中は作業所で仕事に従事し、それ以外はヘルパーによるマンツーマン介助を行っている。なお、住居に民間アパートを借りているが、大家の理解と不動産屋の信頼が必要となっている。その上で、地域生活実現に向けての課題として、地域との関係、家族との関係、支援体制の確立が必要であり、交通機関を利用する上での課題は「コミュニケーション」を上手にできるかどうかが重要である。最後に、地域生活における知的障害者の移動を保障するために「実態を作っていくこと」が大切である。

当日の配布資料及び質疑応答