バリアフリー推進勉強会

当財団では、移動円滑化に関する新しいテーマや課題について、関心のある方々と情報共有し改善の方向性を考えることを目的とした交通バリアフリーに関するワークショップを月に1回開催しています。

第15回バリアフリー推進勉強会開催結果概要

交通政策基本法と地域の移動手段の確保について

開催日
2014年10月16日(木曜日) 18:00〜20:10
開催場所
TKP市ヶ谷カンファレンスセンター カンファレンスルーム3C
参加者数
41名
講師
福島大学 経済経営学類・准教授 吉田樹氏

講演概要

講師:吉田さん

平成25年12月に交通政策基本法が施行され、交通政策における基本理念や国・地方自治体・事業者等関係者の責務等が明確となりました。これを受けて、現在、国では交通政策基本計画の策定に取り組んでいます。そこで、吉田氏から「交通政策基本法と地域の移動手段の確保について」と題し、お話いただきました。

近年、地域公共交通は衰退の一途を辿っています。特に、乗合バスについては1970年以降、40年間で年間利用人員が6割も減少しています。そこで、乗合バスはマイカーに対抗するための対策をおこなってきましたが、十分な効果が得られず廃止、減便、値上げにより利用者が減る悪循環につながりました。その後、2002年2月に需給調整規制の撤廃を行った「乗合バス事業の規制緩和」、2006年10月に地域公共交通会議制度の創設を謳った「改正道路運送法」、2007年10月に地域公共交通総合連携計画の策定を可能にした「地域公共交通活性化・再生法(2014年11月改正)」を策定し、地域公共交通を取り巻く制度環境が変化してきました。そのため、いまだに地域公共交通のマネジメントを行う主体は誰なのかが、明確になっていないと指摘されました。つまり、今までとおりの事業者任せでは地域公共交通を守れなくなっており、政策を行う地方行政の役割が問われています。

一方で、「地域公共交通はなぜ必要か」という点については、交通政策基本法において地域公共交通は、「収益事業」ではなく「公益事業」として位置づけられています。具体的な理由として、@クルマがなければおでかけが制約される地域はあり得ない、Aライフスタイルの変化と持続可能性、Bまちなかの賑わいを演出することが考えられます。特に、地域公共交通の成立とまちなかの賑わい創出は表裏一体の関係であり、クルマを前提にしたまちなかはおもてなしに欠けてしまいます。

さらに、まちを変える公共交通戦略のポイントとして、@人が「集う」「楽しむ」「憩う」機会と空間を生み出すツール(観光政策と交通政策は親和性が高い)であること、A「広く・薄く」の公共交通ネットワークから「軸」と「拠点」を明確にしたネットワークに転換することが考えられます。加えて、地域公共交通を使えるようにするためには、わかりやすく見せること、まちづくりと協同すること、交通網を面的に再構築すること、地域が主体的に取組むこと、制度を使いこなすことが重要であると指摘されました。

勉強会の様子

最後に、@「赤字だから補助する」という論理ではなく、市民の暮らしに「使える」サービスを提供するための投資として、公共交通政策を考えること(公共交通づくりは「おでかけ」の機会を拡げる投資である)、A「先進事例」のカタチを真似するのではなく、三位一体で「おでかけ」を守る文化を創ることが肝要であること(「カタチ」ではなく、「しくみ」から創る)、B地域公共交通は、「現場の近さ」が特徴であり、まちづくり・地域づくりの第一歩として活用することができること(地域公共交通づくりは、地域づくりの「学校」である)と指摘し、「存在感」のある地域公共交通を創りあげる「覚悟」と「いいな」と思えることをやり抜く「突破力」が必要であるとまとめられました。

当日の配布資料及び質疑応答