バリアフリー推進勉強会

当財団では、移動円滑化に関する新しいテーマや課題について、関心のある方々と情報共有し改善の方向性を考えることを目的とした交通バリアフリーに関するワークショップを月に1回開催しています。

第13回バリアフリー推進勉強会開催結果概要

高次脳機能障害者の公共交通機関の利用について

開催日
2014年6月19日(木曜日) 18:00〜20:00
開催場所
ソラシティカンファレンスセンター Room A
参加者数
24名
講師
国立障害者リハビリテーションセンター研究所 障害工学研究部 主任研究官 中山剛氏
NPO法人日本脳外傷友の会 理事長 東川悦子氏

講演概要

講師:中村さん

近年、障害の一つとして高次脳機能障害者に注目が集まっています。そこで、はじめに中山氏から高次脳機能障害について基本的なことをお話しいただきました。

高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。また、「認知症者」と混同されやすいが、高次脳機能障害は「進行しない」「当事者は乳幼児から高齢者まで」であり、認知症は「進行する」「当事者は高齢者が多い(ただし、若年性もある)」と分類できます。現在、高次脳機能障害者は、東京都内に5万人程度(推計)、全国で50万人程度(推計)いるとされています。ちなみに、医師から発達障害と診断された者の数は318千人(推計)です。さらに、高次脳機能障害者が身体障害や知的障害との重複する場合は障害者手帳を取得できますが、18歳以上で受傷した場合、手帳を取得することが難しい場合もあることが指摘されました。

講師:東川さん

次に、東川氏から高次脳障害当事者とその支援者についてお話いただきました。1993年の御子息の交通事故をきっかけに、1997年に「脳外傷友の会ナナ」を設立し、支援活動を開始しました。当初は、高次脳機能障害者を知ってもらうことが必要であったためセミナーの開催や高次脳機能障害者の支援モデルの構築を行いました。例えば、以前は「若年痴呆」などと呼ばれたり、社会復帰できないと思われていましたが、少しずつ理解が広がっています。現在では、全国57団体で「日本脳外傷友の会」の活動を行っています。一方、高次脳機能障害が抱える問題として、例えば、反対方向の電車に乗ってしまう、新幹線では車両、座席番号がわかりにくい、案内がわかりにくいなどの課題があると指摘されました。さらに、鉄道会社の理解が得られず、最寄の無人駅は危険であることから、隣の有人駅を利用するよう促された事例があるそうです。また、今後は、介護者亡き後の支援、重度・重複障害者の支援、小児高次脳機能障害児教育の支援等の課題があるとまとめられました。

第13回ワークショップの様子

続いて、中山氏から詳細な高次脳機能障害者の特性(省略、別添資料を参照)と公共交通機関の利用についての話題提供がありました。高次脳機能障害者は移動(外出等)が困難なことが数多いが、例えば、簡単な操作の機器、わかりやすい案内標識、ホーム柵などの設置などで可能となることもあります。しかし、まずは高次脳機能障害の認知度をさらにあげる事で、交通関係者等の理解が得られることが必要であるとまとめられました。

当日の配布資料及び質疑応答